今でもたまにグダる日記

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三題噺「中古」「幸」「アルファベット」

 親の顔をよく知っている俺からすれば、こうなることは大体解っていた。
 20代を謳歌する俺の城に突如としてやってきた台風は俺の友達夫婦に「信也」と名前を付けられている。今年で5才の遊びたい盛りだ。その夫婦は俺に子守を任せ、二人で買い物に出かけている。
「ねぇねぇあんちゃん、コレ何!?」
「あー?」
 俺が大事に取っていた……というより、捨てるのを忘れていて部屋の隅に押し込めていたガラクタを見つけられたのが始まりだった。信也は父親同様、俺の部屋にある『面白いもの』を散らかしている。買い物から帰ってきたら掃除を手伝わせてやることを心に決めて、今はこの台風が収まるのをただじっと待っていた。
 その台風の威力たるや凄まじく、捨て忘れていたペットボトルを集めてボーリングし、奥に閉まっていた麻雀牌と将棋の駒をひっくり返し、更に奥に捨て忘れていたキャラクターソーセージのおまけをぶっちらかした。父親譲りの容赦の無い暴れっぷりに、怒るのを通り越して軽い感動を覚える。
「これこれ!」
 信也が持っていたのは、四角く折りたたんだ厚紙だった。
 思い当たる節が無かったので広げてみると、俺の肩幅よりちょっと大きいくらいのサイズだった。カラーで印刷されていたはずだがもうすっかり色が落ち、折り目はボロボロ。それでも、海と陸の違いくらいはまだ解る。
「これか、これは世界地図だ」
「ちず?」
 信也は首を傾げる。
「そう、地図。これが世界の、えーっと、何て言うかだな……国の名前と場所が書いてあるんだ」
 とりあえず将棋の駒を足で寄せて、床に地図を置く。
「この真ん中にあるのがアメリカだ。たぶんアメリカで買った地図だからアメリカが真ん中なんだろうな。国の名前がアルファベット表記だ」
「このでっかいのがアメリカ?」
「そう。下にあるのがブラジル。こっちにあるでっかいの、ロシアだけどこれ違うな。ソ連か? どんだけ古いんだよこの地図。ソ連なんて言っても解らないだろ」
「わからなーい」
「だよな。で、これが中国。下にあるのがオーストラリア。あと、この辺りがヨーロッパ」
「へー。日本は?」
「これ」
「ちっちゃ!」
 予想通りのリアクションに内心ほくそ笑む。
「なんて読むの?」
「これか? 『ジャパン』って読むんだよ」
「じゃぱん?」
「そう。『なでしこジャパン』とか『サムライジャパン』とかテレビで言うだろ?」
「いう! 知ってるよ!」
「そうか、信也は親父より賢いな」
「んー、そうかなぁ?」
 にこっと笑って首を傾げる姿はとてもかわいらしい。あいつらの親ばかも頷ける。俺だってこの部屋の惨事がなければ手放しで可愛がるところだ。
「ねぇねぇ、オランダってどこ!?」
「オランダか? オランダは……これだ」
 ヨーロッパの国々はただでさえ解らない上に英語表記なので、かなり自信が無い。だけど相手が何も知らない5才児なので、如何にも知っているかのように堂々と言い切っておけば大丈夫だろ。
「ちっちぇー! 日本より小さいじゃん!」
「ヨーロッパだからな。そうか、信也は国の名前なんてサッカー見て覚えたのか」
「オランダって強いからもっと大きい国かと思ってた!」
 それからしばらく、信也が知っている国の名前を世界地図で教えてやった。古くて色あせていてかび臭い世界地図は、5才の少年を楽しませる分には充分に役立った。
 
「ただいまー……」
「……」
「おう、おかえり」
「パパおかえりー!」
 部屋に入ってきた父親を見るなり、俺の世界地図を踏みつけて信也は突進した。強盗が来たとしか思えない俺の部屋に最初は言葉を失っていたが、信也を抱き留めて満面の笑みを浮かべる。
「これ、信也が?」
「父親似の凄まじい暴れぶりだった。後で部屋掃除手伝ってね」
「あー、それは無理だ。俺達が信也を見ていないと、信也はまた別の部屋を散らかしちゃうもんなー」
「うん!」
 頷いているんじゃねーよ。
「まぁ、お前にゃ期待してないから信也を連れてってくれ。俺もこの部屋を片付けたらそっちに行くから」
「だってさ、信也。俺達は先に帰っていような-」
 幸せいっぱいの親ばか親父は、子供の手を引っ張って俺の部屋を出た。
「凄いねー、手伝うよ」
 やっと我に返った奥さんが、将棋の駒を拾おうとかがみ込む。俺はそれを、手で止めて制止した。
「あーいいよこれくらい。アイツが来た時よりはまだマシ」
「いやいや、そんなことないでしょ」
「テレビ壊されてないからね。安い安い」
 ぶっ壊されたブラウン管テレビは今や軽くて薄い液晶テレビだ。ブラウン管をまだ置いていたらまた信也に触られて壊されたかもしれない。
「早く行きなよ。信也の誕生日プレゼントはもう買ったんでしょ? 散らかってるのは殆どゴミだし、良い機会だからパーッと捨ててしまうから。俺一人で充分」
 奥さんは暫く迷ってから、頭を下げて部屋を出て行った。
 家からお誕生日会の会場までは歩いて10分と掛からない。走れば5分だろう。
「子守も大変だな……」
 幸せな家庭というのも大変だな、と一人納得する。まずはゴミ袋を用意して、30分くらいしたら適当に切り上げよう。
 せっかくの誕生日を、盛大に祝ってやらないと。
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コメント

[title]:No title

 突如企画三題噺にお付き合い戴いてありがとうございました~(`・ω・´)

 親ばか良いですねぇ(*´∇`*)幸せそうw
 自分はお題を言葉で表そうと思ってしまうので、雰囲気で表そうって云う小説、これから参考にさせていただきますっ(`・ω・´)(`・ω・´)

 また機会があったらよろしくお願いします~(`・ω・´) 
  1. 2012/06/10(日) 22:42:14
  2. URL
  3. ユウ #-
  4. [ 編集 ]

[title]:No title

読ませていただきました。
ほっこりしますね(´∀`)
僕は性格がネガティブなので、
こういう話とか絶対思いつきませんw
幸せなストーリーとか無理ですw

  1. 2012/06/11(月) 19:45:46
  2. URL
  3. ざぽ #U8THUymg
  4. [ 編集 ]

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